(剧透!!持续更新中)YYQ字幕组制作,未经允许严禁转载,仅作交流试看之用。
【资料图】
翻译:高家之之 文源:YYQ丶歪某人 校对:高家之之
第一章:想去乌托邦
阳光映满这澄澈的蓝天。
春天柔和的阳光洒在樱花枝头的骨朵儿上。
“叮铃铃”的铃声响起。貌似标志着这个城镇一角的小学放假时间的开始。敞开的窗户内传来了孩子们的说话声。
在这学校的教室里,一个少年惊讶地探出了身子。
“乌托邦?”
戴着圆形眼镜的少年好奇地问道。他那梳得圆圆的发旋上有两根头发扑腾着。看来是在刚才的课上打瞌睡了,在嘴角还能看到口水的痕迹。他看起来不太聪明的样子。
少年的名字是野比大雄,是这个学校的一名小学生。
大雄的小眼睛里似乎闪动着好奇的光,对着眼前这个相貌聪颖的少年。
“对,‘乌托邦’是一个月牙形的岛,没有战争,没有饥荒,每个人都能幸福地生活。”
他的名字叫出木杉英才。作为大雄的同班同学,他经常以班级第一名的成绩而自豪。是与大雄完全相反的少年。
出木杉给大雄看了放在桌子上的书。
“这就是所谓的理想乡、乐园。”
书的封面上写着“乌托邦”。翻开书,里面有中世纪的街道、城堡、海上漂浮的帆船和茂密的森林的插图。画中的每个人都带着平和的笑容,看上去确实很幸福。
“不挨饿,就是说可以随便吃好吃的东西吗
在大雄的旁边,体格壮硕的少年眼睛猛然放光。可能是对食物很敏感的缘故,他兴奋得快要流口水了。少年的名字叫刚田武。是大雄和出木杉的同班同学,被大家称为胖虎。是所谓的孩子王,胆小鬼大雄经常他被欺负。
胖虎旁边的小个子少年追问着出木杉。
“没有纷争,就意味着都是好人吗?”
这个少年的名字叫骨川小夫。这位也是大雄的同班同学,尖头尖嘴是他的标志。出自豪门的他有喜欢炫富的坏毛病。
小夫的问题,是由站在出木杉附近的少女代替他回答的。
“那个国家的居民肯定都是优等生吧?”
用精辟的语言总结的少女,确实散发着优等生的气息。这是他们里唯一的女孩,名叫源静香。在耳后扎起两缕头发的美少女,她温柔的性格和柔和的笑容向周围的人传递着温暖,她同时也是大雄憧憬的存在。
大雄探出身子追问着静香的话。
“那该不会连考试都没有吧?”
对于成绩不好的大雄来说,没有考试的世界就等于乐园。
“没有粗鲁的家伙,也没有坏心眼的家伙吗?啊~ !为什么我没有出生在那个国家呢~ !”
一边模仿着某些人的表情一边夸张地叹息的大雄身后,胖虎和小夫静静地嘟囔着。
“哦,和粗鲁的家伙……”
“坏心眼的家伙,对吧?”
貌似是大雄无意识地暗指着他们。而且还很有礼貌地做出了高质量的模仿,就算是直觉不好的两个人也马上注意到了。
“你在说谁呢~,大雄君~ ?”
胖虎和小夫异口同声,以可怕的表情凑近。
“啊,不,那个……”
被小夫逼问得语无伦次大雄后退连连。
“大雄这种人,即使出生在那个国家,肯定还是个没用的家伙。”
“我、我也有可能变成出木杉那样吧!”
大雄拼命反驳,但无论如何都缺乏说服力,随之便对出木杉投以期待的眼神。
“呐呐,乌托邦在哪里呀?
“哈哈,这本书是托马斯·莫尔写的小说。乌托邦是虚构出来的。”
出木杉拿出书的封面苦笑。
“怎么这样,难道不是真的有嘛……”
“那当然了。”
小夫嘲笑着失望的大雄。
“不过也不能说完全是编造的。”
对出木杉的话,不仅是大雄,连胖虎和小夫也“诶?”地一声回看了一眼。
“因为有人说乌托邦是有原型的。”
“乌托邦的传说自古以来就有了。”
静香表示同意。两个优等生就这样开始列举关于乌托邦的具体例子。
“嗯,比如幻岛图雷的传说。说是在北冰洋确实存在过的大岛,但有一天突然消失了。另外还有消失在海上的穆大陆和亚特兰蒂斯……”
“日本海底的龙宫城不也是这样吗?”
“是啊,有中国深山里的世外桃源,还有会飞的城市,真是不可思议的巧合。”
出木杉和静香凭借丰富的知识,聊得很起劲。
虽然细节的地方不明白,不过,大雄倒也了解到世界上有乌托邦传说的事。
“好了好了!只是没找到,乌托邦在哪里也不奇怪吧!”
大雄探出身子高兴地叫着,他闭上眼睛,模模糊糊地开始妄想。
“在哪里呢……海底?还是山顶?还是在空中……”
“野比的心思已经飞到空中去了吗?”
这时,背后传来粗粗的声音,大雄被拉回了现实。
“啊?”
战战兢兢地回头一看,眼前站着用可怕的表情瞪着大雄的老师。胖虎、小夫、静香和出木杉也察觉到老师的动静,早已回到座位上。
“野比!还不赶快坐下!”
“好、好~ ~ !”
从班级发出嗤嗤的笑声中,大雄慌里慌张地回到了座位。
上课结束的铃声响完之后,大雄瘫在书桌上被现实狠狠地打击着。
眼前是考试分数。分数从15分,到10分,再到0分,真是惨不忍睹。
“哈~ ~”
不由自主地叹了口气,讲台上传来老师尖锐的声音。
“春假前,好好复习发下来的试卷!你在听吗,野比!”
“好!”
听到大雄情不自禁地站起来回答,胖虎和小夫嘻嘻地笑。
“哈~ ~”
在教室外的走廊上,大雄再次长叹了一口气。肩上的书包沉甸甸的。就这样回家,把答案给妈妈看会怎样呢?这一点,学习再差的大雄也明白。
“大雄~ !什么呀,这是个什么分数~ !”
在大雄的脑海里浮现出愤怒即将爆发前的妈妈如恶鬼一样俯视着他的脸。
“hi ~ ~ !”
情不自禁地转移目光至走廊的前方,大雄发现了天使的背影。
“静香!”
大雄笑着跑过去打了招呼。见喜忘悲,这是大雄的优点也是缺点。
“今天玩翻花绳吗?”
翻花绳是大雄为数不多的绝活。翻出梯子和扫帚可谓是轻轻松松,根本难不倒每天都投入到开发原创的翻花绳技艺的热情中的大雄。大雄无数次梦想着,翻花绳不可以成为学校的科目吗?。
静香回过头,微笑着回答。
“对不起,今天要复习试卷了。”
对于这个干脆的回答大雄依然不放弃。
“好不容易放春假,今天这样不是很好吗?”
“不过,今天不做的话可能会忘了。下次吧。”
静香决绝地拒绝了邀请,匆匆离去。
这次有人在惨遭拒绝的大雄的身后,打了声招呼。
“看来你很闲啊,大雄。”
胖虎和小夫走过来,强行把手搭在大雄肩膀上。
“你要感谢我,让能让你加入我的棒球阵容。如果失误的话,小心我把你揍飞。”
“那个,可是我要复习考试……”
大雄想以和静香相同的理由拒绝邀请。他今天没有打棒球的心情,肯定会像往常一样三空棒和失误不断,被对方打得落花花的。这次小夫封死了想要用假笑临阵脱逃的大雄的出路。
“好不容易放春假,不是很好吗?”
这也是刚才大雄说过的话。小夫应该在听他和静香的对话吧。大雄无奈而悲伤地低下了头。
电线杆根处,蒲公英在春风中摇曳着。
大雄无力地走在旁边。在球场上摔倒的脚咯吱咯吱地疼,头上还残留着被胖虎狠狠揍过的拳头的重量。
和预想的一样,三空棒和错误不断,不出所料地受到了胖虎的铁拳制裁。
啊,为什么我总是这样呢……。
消沉的大雄的头脑中,不停地盘旋着负面的思考。被老师骂,被拒绝,打棒球总是失败……。虽然不能说一切都是自己的错,但春假开始后,没有一件好事发生也是事实。
“果然是做什么都不行的家伙,嘻嘻。”
被胖虎打得稀里糊涂的脑袋里,回响着被小夫讥讽的轻蔑的声音。
是啊,我做什么都不行。必须更坚强一点啊……。
大雄越来越消沉,脚步沉重地进入我家。就这样摇摇晃晃地准备踏上通往二楼的楼梯时,通往起居室的拉门打开了。
“你回来了。”
大雄的妈妈用平静的声音说。那声音看似温柔,却似乎看穿了什么。
“今天不是发成绩的日子吗?”
妈妈知道了考试的事。如果不揪住刚回家的大雄,卷子多半会被藏起来。
大雄摇了摇头,慌忙后退。
“啊?没有,没有发?啊哈哈……”
明知道这可能是徒劳的抵抗,也只能蒙混过去。如果在这里交出考卷,必定会遭受2小时以上的说教。春假期间,也一定会每天被逼着学习的。
妈妈没有追问。大雄趁此机会匆匆忙忙地跑上楼梯到2楼。
即使现在马上,也要想办法把卷子处理掉……!
这种时候能依靠的只有一个人。那就是……。
大雄把手搭在自己房间的门把手上,发力开启。就在他想要呼唤应该在里面的那位,可以依靠的人的名字的时候。
“南部岛屿!”
房间里传来一声大吼。
喔喔喔喔!
房间里传来可怕的声音。与此同时,寒风和暴雪向大雄的脸袭来。一瞬间将大雄吓懵了。
也就在这一瞬间,暴风雪中又有像雪人一样的东西滚了过来。
虽然表面上全是雪,但也看得出是蓝色的,“哇哇!”地发出糊涂的声音,直接撞上大雄进来时的门。
呼哈!雪人发出奇怪的声音,慢慢转动着脑袋。好像是受到了冲击而头晕目眩。但雪人却摇了摇头,恢复了意识,开始向房间中央前进。
前面有一扇很大的门。粉红色的门,现在正大开着。不可思议的是,从那扇门的另一边飘来了大量的暴风雪。
雪人冒着风雪走近门,并用力将它关上了。结了冰的门发出咯吱咯吱的声音,在艰难地推动下,门终于“砰”的一声关上了。
风雪停了,房间里一片寂静。
“你在干什么呢?”
听到大雄的声音,蓝色的雪人头也不回,颓然地低下头喃喃道。
“秘密工具正在整理中。嗯,这扇‘任意门’果然已经到了使用寿命了。还有这个,那个也不行……”
他垂着头,看着满屋子奇怪的道具,回过头来。
蓝色的雪人,是在大雄的家一起生活的机器人。
他的名字叫哆啦a梦。是来自二十二世纪未来的猫型机器人,职责是照顾大雄。蓝色的大脑袋,大大的眼睛,下面是红红的圆圆的鼻子和一张更大的嘴。鼻子旁边左右各有3根胡须,勉强可以看出是只猫。而且这只也像猫一样,脖子上挂着铃铛,和脑袋差不多大的身体上长着稍短的手脚。肚子上有一个半月形的白色口袋。
“哆啦a梦的道具果然都是些破烂的东西,都是买的旧款。”
大雄一边吃惊,一边对着哆啦a梦打趣。
房间里的道具都是从哆啦a梦肚子里的口袋里拿出来的。这个名为“四次元口袋”的神奇口袋里,装着许多未来的道具。哆啦a梦用这个道具,帮别人实现愿望,解决麻烦,帮助了很多人。相反,这些工具本身也有可能成为故障的原因……。
哆啦a梦皱起了眉头,因为大雄居然把自己引以为豪的道具统称为旧款。
“太麻烦了。没办法,全部拿去回收处理吧。”
也有道理。毕竟刚才的“任意门”怎么看都不舒服。明明是只要告知目的地,就能瞬间连接到那个地方的道具,明明说出的是“南部岛屿!”,联系到的却是暴风雪肆虐的地方。完全相反。
哆啦a梦把手伸进口袋,摸出了什么东西。
“‘四次元垃圾袋’!”
好像是淡蓝色的塑料袋,表面画着奇怪的标记。是从没见过的道具,大雄想。
“那个垃圾袋是?”
“用完的东西放在四次元空间的垃圾堆放场,能放进去的垃圾量是固定的,而且必须分类。”
哆啦a梦边说边把“四次元垃圾袋”的口对着“任意门”。“任意门”就像魔芋一样变了形,被吸进袋子里。如先前的形容一般,“任意门”消失得无影无踪。
看着那个样子,大雄好像想到了什么。自己的书包里也正好有想要消失得无影无踪的东西。
另一边,哆啦a梦蹲在地上继续收拾秘密道具。
将包裹着的时间移动到过去和未来的“时间包袱”、无论什么病都能立刻治愈的“医生包”、将真实影像反映在周围的“立体影像机”、将回忆兑换成金钱的“记忆信贷机”等各种奇怪的道具散落在房间里。
“哆啦a梦。”
大雄对着哆啦a梦的背影说。
“我来帮你,你去散步吧。”
哆啦a梦停下手回头看。大雄在眼前咯咯地笑着。
“可以吗?大雄可真是懂事啊。”
哆啦a梦没有理会那不自然的笑容,愉快地站了起来。
“那好不容易来了,你去和前几天认识的那只美国短毛猫”毛毛“聊聊吧。”
哆啦a梦在附近有几只猫女朋友。
哆啦a梦满眼红心地走出了房间。
“那么,接下来就拜托了~ ~”
哆啦a梦消失在走廊对面的瞬间,大雄迅速地取出了藏在背后的考试答案。然后直接靠近“四次元垃圾袋”的袋口。正如大雄所想的那样,用红笔写的“0”的文字消失在四次元的彼方。那一瞬间,
“大雄!”
一个尖锐的声音从房间门口传来。刚才应该出去了的哆啦a梦,用严厉的表情瞪着大雄。
“你刚才扔了什么!”
哆啦a梦咚咚地朝这边走来。身高129.3厘米、体重129.3千克的庞然大物迫近眼前,相当有魄力。
“我、我什么都没扔!我想帮你把哆啦a梦的破烂扔掉……”
大雄慌忙把“四次元垃圾袋”藏在背后。
“你只有在做坏事的时候才会变得亲切!你肯定是吧0分卷子扔进去了吧!”
好像哆啦a梦从一开始就注意到了大雄的企图。一脸凶狠地把“四次元垃圾袋”拿回口袋。大雄开始了他的反驳。
“不是只有0分!还有10分、15分!”
对他本人来说可能是很大的不同,但在哆啦a梦看来都一样,他把脸凑近大雄。
“果然是这样啊!你这家伙总是这样!再坚强一点又会怎么样呢?”
“!”
被戳中心事的大雄不由自主地提高了声音。
“我也想生为优等生啊!哆啦a梦的任务不就是让我振作起来吗?你这个废物机器人!”
虽然骂得很凶,但哆啦a梦一点都不胆怯。
“别怪别人!你这个废柴小学生!”
“你说什么?”
“什么啊~ !”
两人面面相觑,大声怒骂。两人的大喊声传到1楼,“安静点!”直到妈妈大声呵斥,还不到1分钟。
* * *
在澄澈的蓝天中央,一架大型飞机喷射出笔直的尾迹云。
大雄躺在草原上仰望着那般静谧的天空。
这里是学校的后山,也是大雄的秘密基地。每当有痛苦的事或不愉快的事,就会来这里放松和转换心情。
刚和哆啦a梦吵架而心情郁闷的大雄,大大地叹了口气。
“啊~啊,如果乌托邦真的存在该多好啊……”
大雄想起了出木杉的话。没有痛苦、悲伤和纷争的乐园——我现在就想去这样的地方。
但白日梦并不会持续很久。大雄正要进入拿手的午觉,闭上眼睛开始迷糊。
有一只虫子惊扰了大雄惬意的午睡。
蓝色的虫子在脸上飞来飞去,发出嗡嗡的声音,最后停在鼻子里。就算是再迟钝的大雄也注意到了,他闭着眼睛郁闷地掸了掸虫子。但是虫子总是执拗地停在鼻子里。
“真是个执拗的虫子啊……”
大雄睁开眼睛,捏着虫子举到眼前。
“嗯?”
那个时候,大雄注意到了什么。
在蓝虫对面的晴空中,漂浮着某种不可思议的东西。那是一弯巨大的金色月牙。
月……?
但现在不是晚上。虽然白天也能看到月亮,但那和平时看到的月亮完全不同。月牙形的东西在阳光下闪闪发光。
呆呆地注视着,大雄想起了出木杉的话。
(《乌托邦》是一个月牙形的岛……)
难道,那是……!
大雄把蓝色的虫子胡乱扔出去,猛地站了起来。
可就在这一瞬间,浮现在空中的月牙就像被黑板擦擦过一样,悄然消失了。
看着一切的大雄,“啊……”地叫出了声。
“那个……那个,那个……那个是……”
大雄跑了起来。他一溜烟地跑下山坡,一边喊着刚刚和他吵过架的朋友的名字。大雄的声音响彻后山。
“哆、哆、哆、哆……哆啦a梦~~~~!!”
(日语原文供参考)
澄んだ青空に太陽が輝いている。
ゴツゴツとした桜の枝先のつぼみに、春の柔らかい日差しが降り注いでいた。
キーンコーンカーン、とチャイムの音が聞こえる。町の一角にそびえる小学校が、休み時間の始まりを知らせたらしい。開いた窓から、子どもたちの話し声が聞こえてきた。
そんな学校の教室で、一人の少年がキョトンと身を乗り出した。
「ユートピア?」
円いメガネをかけた少年は不思議そうに尋ねる。丸く整えられた髪のつむじから2本の毛がぴょこんとはねていた。どうやら先ほどの授業で居眠りをしていたのか、口の端にはよだれの跡が見える。その様子から見ても、あまり利口そうな雰囲気はうかがえない。
少年の名は野比のび太。この学校に通う小学生だ。
のび太の小さな瞳は、興味津々といった様子で、目の前の利発そうな少年に向けられていた。
「そう。『ユートピア』は三日月の形をした島でね、争いも戦争もなく、飢えることもない、誰もが幸せに暮らせる国なんだ」
よどみなくスラスラと話す少年の名は出木杉英才。のび太のクラスメイトで常にクラストップの成績を誇る。のび太とは正反対の少年だった。
出木杉は机の上に置かれていた本をのび太に見せた。
「いわゆる理想郷、楽園だね」
本の表紙には『ユートピア』と書かれていた。本をめくると、中には中世の街やお城、海に浮かぶ帆船や深い森の挿絵が描かれている。そこに描かれた人々は皆、穏やかな笑顔を浮かべ、たしかに幸せそうだ。
「飢えることがないってことは、うまいもん食べ放題ってことか
のび太の隣で、体格の良い少年が目を輝かせた。食べ物に目がないのか、今にもよだれを垂らさんばかりに興奮している。少年の名は剛田武。のび太や出木杉のクラスメイトで、みんなからはジャイアンと呼ばれている。いわゆるガキ大将であり、弱虫ののび太がその暴力の標的になることもしばしばだった。
そんなジャイアンの隣で、小柄な少年も出木杉に尋ねた。
「争いもないってことは、いい人ばかりってこと?」
その少年の名は骨川スネ夫。こちらも同じクラスメイトで、ツンととがった髪型がトレードマークだ。スネ夫はお金持ちの家の子であり、それをひけらかしたりと少々イヤミなところがある。
スネ夫の質問に対して、出木杉の近くに立っていた少女が代わりに答えた。
「きっとその国の住人は、全員が優等生みたいなものなんじゃない?」
的確な言葉でまとめた少女は、まさしく優等生の雰囲気を漂わせていた。紅一点の少女の名は源静香。耳の後ろで髪を二つにまとめた美少女で、優しい性格と柔らかい笑顔はまわりの人も温かい気持ちにさせる。しずかはのび太の憧れの存在だった。
しずかの言葉に、のび太は身を乗り出して食いついた。
「じゃあもしかして、テストもないの?」
成績の良くないのび太にとって、テストのない世界はまさしく楽園に等しい。
「乱暴なやつも、意地悪なやつもいないの? ああ~! なんでぼくはその国に生まれなかったんだ~!」
顔マネをしながら大げさに嘆いたのび太の後ろで、ジャイアンとスネ夫が静かにつぶやいた。
「ほお~、乱暴なやつと……」
「意地悪なやつ、ねえ」
のび太は無意識のうちにこの二人をイメージして話してしまったらしい。しかもご丁寧にクオリティの高い顔マネまで披露してしまったから、勘の悪い二人でもすぐに気がついたようだ。
「誰のことかなぁ~、のび太くぅん~?」
ジャイアンとスネ夫は声を揃えて、怖い顔で迫った。
「あ、いや、その……」
しどろもどろで後ずさりするのび太に、スネ夫が詰め寄る。
「だいたいのび太なんか、その国に生まれたって、ダメなやつのままに決まってるだろ」
「ぼ、ぼくだって出木杉みたいになってたかもしれないだろ!」
必死に言い返すが、どうにも説得力に乏しい。のび太は出木杉に期待の眼差しを向ける。
「ねぇねぇ、ユートピアってどこにあるの
「はは、この本はトマス・モアという人が書いた小説。ユートピアは創作だよ」
出木杉は本の表紙を見せて苦笑した。
「なんだ、本当にあるわけじゃないのか……」
「当たり前だろ」
がっかりしたのび太を、スネ夫が小バカにして笑う。
「でもあながちまったくの作り話とも言えないかも」
出木杉の言葉に、のび太だけではなくジャイアンとスネ夫も「え?」と見つめ返した。
「ユートピアにはモデルがあるという説もあるから」
「理想郷伝説は大昔から世界中にあるものね」
しずかが同意した。優等生の二人は、そのままユートピアについての具体例を挙げ始める。
「うん、たとえば幻島トゥーレの伝説。北極海にたしかにあった大きな島なんだけど、ある日突然消えてしまったんだって。他にも、海に消えたムー大陸やアトランティス……」
「日本の海の底の竜宮城もそうじゃない?」
「そうだね。中国の山奥にあるといわれる桃源郷や、空飛ぶ都市のマゴニアもあるし、不思議な偶然だよね」
出木杉としずかの豊富な知識によって、話は盛り上がっていく。
細かいところはわからないが、ユートピア伝説が世界中にあることはのび太にも伝わった。
「じゃあじゃあ! 見つかってないだけで、ユートピアがどこかにあってもおかしくないよね!」
身を乗り出して嬉しそうに叫ぶと、のび太は目を閉じて、ぼんやりと妄想を始める。
「どこにあるんだろう……。海の底? 高い山のてっぺん? やっぱり空に……」
「野比の気持ちはお空に飛んでっておるのか?」
その時、背後で野太い声が聞こえ、のび太は現実に引き戻された。
「ひっ?」
おそるおそる振り返ると、目の前には怖い顔でのび太を睨みつけている先生が立っている。ジャイアンやスネ夫、しずかや出木杉も、先生の気配を察してとっくに席に戻っていた。
「野比! さっさと席につかんか!」
「は、はい~~っ!」
クラスからクスクスと笑いがもれるなか、のび太は大慌てで席に戻っていった。
授業終わりのチャイムが鳴り終わったあと、のび太は机で現実に打ちのめされていた。
目の前には戻ってきたテストの答案がある。点数は15点、10点、そして0点と、見るも無惨なものだった。
「はぁぁ~~」
思わずもれたため息の向こう側、教壇から先生のするどい声が響く。
「春休みの前に、返したテストをしっかり復習するように! 聞いとるのか、野比!」
「はいっ!」
思わず立ち上がって返事したのび太を、ジャイアンやスネ夫がヒヒヒと笑うのが聞こえた。
「はぁぁ~~」
教室の外の廊下で、のび太はもう一度大きなため息をついた。肩にのったランドセルがずしりと重い。このまま家へ帰って、ママに答案を見せたらどんなことになるか。それはいくら勉強のできないのび太でもわかる。
『の~び~太~! なんですか、その点数は~!』
怒り爆発寸前の鬼のような形相で見下ろすママの顔が、のび太の脳裏に浮かぶ。
「ひぃ~~!」
思わず目を背けた廊下の先に、のび太は天使の後ろ姿を見つけた。
「しずかちゃ~ん!」
のび太は笑顔でかけよって声をかけた。目の前に楽しそうなことがあると、イヤなことをすぐに忘れられるのは、のび太の長所であり短所でもある。
「今日、あやとりして遊ばない?」
あやとりはのび太の数少ない特技だ。はしごやホウキを作るのは朝飯前で、オリジナルのあやとり技を日々開発するほどの熱の入れようだ。のび太は何度となく、あやとりが学校の教科にならないかな~と夢想している。
振り返ったしずかは軽く微笑みながら答えた。
「ごめんなさい。今日はテストの復習をしないと」
あっさりした答えにのび太は食い下がった。
「でもせっかく春休みなんだし、今日くらいイイじゃない」
「でも、今日やらないと忘れてしまいそうだから。また今度ね」
とりつく島もなく、しずかは誘いを断るとすたすたと立ち去っていった。
残念そうに取り残されたのび太の後ろ姿に、今度は誰かが声をかけた。
「暇そうだな、のび太」
「
ジャイアンとスネ夫が近づいてきて、強引に肩に手を回してくる。
「野球のメンバーに入れてやるから感謝しろ。エラーしたらぶっ飛ばすけどな」
「いやぁ、でもテストの復習が……」
のび太はしずかと同じ理由で誘いを断ろうとする。今日は野球をする気分ではない。いつものように三振やエラーを重ねて、言われたとおりにぶっ飛ばされるに決まっている。作り笑いでその場から逃げ出そうとするのび太の行く先を、今度はスネ夫が塞いだ。
「せっかく春休みなんだし、イイじゃないか」
こちらも先ほどのび太が言った言葉だ。スネ夫はしずかとの会話を聞いていたのだろう。のび太は観念して悲しげにうつむいた。
電信柱の根もとで、春の風にタンポポが揺れていた。
そのそばをのび太は力なく歩いている。グラウンドで転んだ足がズキズキと痛み、頭にはジャイアンにぶん殴られたげんこつの重みが残っている。
予想通りに三振やエラーを重ねて、宣言どおりにジャイアンから鉄拳制裁を受けたのだ。
あ~あ、どうしてぼくはいつもこうなんだろう……。
落ち込んだのび太の頭の中に、ぐるぐるとマイナスな思考がめぐっている。先生に怒られ、しずかに断られ、野球をすれば失敗ばかり……。すべてが自分のせいとは言わないが、春休みの始まりに、いいことが一つも起きていないのも事実だ。
『やっぱり何をやってもダメなやつ、ヒヒヒ』
ジャイアンにボコボコにされてもうろうとした頭のなか、スネ夫がたたいた軽口の声が響く。
そうだよな、ぼくは何をやってもダメなんだよな。もっとしっかりしなきゃ……。
のび太はますます落ち込んで、足取り重く我が家へ入っていく。そのままとぼとぼと2階に向かう階段に足をかけようとしたとき、居間へつづくふすまが開いた。
「おかえりなさい」
穏やかな声でのび太のママが声をかけた。それは優しいように見えて、何かを見透かしているような声だった。
「今日、テスト返ってくるんじゃなかった?」
ママはテストのことを知っていた。そして家へ帰宅したばかりののび太を捕まえなければ、テストを隠されるおそれがあることもわかっていた。
のび太は首をふって、あわてて後ずさりする。
「え? いやあ、返ってきてないけど? あはは……」
無駄な抵抗かもしれないとわかっていても、ごまかすほかなかった。ここで答案を見せたら、2時間以上のお説教コースは確定だ。春休みじゅう、毎日の勉強を申し渡されることも間違いない。
ママはそれ以上、追撃してこなかった。のび太はそそくさと階段を2階へと駆けあがっていく。
今すぐにでも、テストをなんとかしなきゃ……!
そんな時に頼れるのは一人だけ。それは……。
のび太は自室のドアノブに手をかけて開ける。中にいるはずの頼れる存在の名を呼ぼうとしたその時だった。
「南の島!」
と、部屋から大声が聞こえた直後、
ゴオオオオオオッ!
凄まじい音が部屋のなかから聞こえてきた。同時に冷たい暴風と、大きな雪のかたまりがのび太の顔に襲いかかる。一瞬のことで何が起きたかわからなかった。
その瞬間、吹雪に交じってさらに雪だるまのようなものがこちらへ転がってきた。
その表面は雪まみれだが青く、「うわぁぁぁっ!」と間抜けな声を上げて、のび太が入ってきたドアに直撃する。
ふにゅ! とおかしな音ともつかない声を上げて、雪だるまは頭をゆっくりと回した。どうやら衝撃で立ちくらみが起きたようだ。だが首を振って意識を取りもどし、雪だるまは部屋の真ん中へ直進を始めた。
その先には大きなドアが置かれていた。ピンク色のドアだったが、今は大きく開きっぱなしになっている。不思議なことに、そのドアの向こうから大量の吹雪が舞い込んできている。
雪だるまは吹雪をかいくぐりながらドアに近づいて、扉を力任せに閉めていく。氷のついたドアからギギギと鈍い音が鳴って、ようやくバタンと扉が閉じられた。
吹雪が止んで部屋に静けさが訪れる。
「もう、何やってるの?」
のび太の声に、青い雪だるまは振り返りもせず、がっくりと頭を落としてつぶやいた。
「ひみつ道具の整理中。う~ん、やっぱりこの〝どこでもドア〟はもう寿命だなぁ。あとはこれと、これもダメ……」
と、うなだれながら部屋を埋め尽くすおかしな道具類に目をうつしつつ、振り返る。
青い雪だるまは、のび太の家で一緒に暮らしているロボットだった。
その名はドラえもん。二十二世紀の未来から来たネコ型ロボットで、のび太のお世話をするのが役割だ。青い大きな頭に大きな目、その下には赤い団子っ鼻とさらに大きな口が開いている。鼻の横には左右3本ずつのヒゲが生えており、かろうじてネコであることがうかがえる。そしてこちらもネコっぽく、鈴が首に掛けられており、頭と同じくらいの大きさの胴体からは多少短めの手足が伸びていた。そしておなかには半月型の白いポケットがちょこんと添えられている。
「やっぱりドラえもんの道具は、ガラクタばっかりだなあ。旧型を買うからだよ」
のび太はあきれながら、ドラえもんに声をかけた。
部屋に置かれている道具類は、すべてドラえもんのおなかのポケットから出てきたものだった。〝四次元ポケット〟という名の不思議なポケットの中には、たくさんの未来の道具が入っている。ドラえもんはこの道具を使って、誰かの願いをかなえたり、トラブルを解決したり、多くの人を助けてきた。反対にこれらの道具自体がトラブルの原因になることもあるが……。
自慢の道具をまとめて旧型呼ばわりされ、ドラえもんは眉をひそめる。
「大きなお世話だ。仕方ない。全部リサイクルに出すか」
思い当たるふしはあったのだろう。なにしろ先ほどの〝どこでもドア〟はどう見ても調子が悪かった。目的の場所を告げれば、瞬時にその場所とつながることができる道具なのに、「南の島!」と告げても、つながったのは猛吹雪が荒れくるう場所だった。まったくの正反対だ。
ドラえもんはポケットに手を入れて中をまさぐり、何かを取り出した。
「〝四次元ゴミ袋〟!」
うすい水色のポリ袋のようで、表面におかしなマークが描かれている。見たことのない道具だ、とのび太は思った。
「そのゴミ袋は?」
「使い終わった物を四次元空間のゴミ置き場に置いておける。入れられるゴミの量は決まっているし、ちゃんと分別しないといけないけどね」
言いながらドラえもんは〝四次元ゴミ袋〟の口を〝どこでもドア〟へ向けた。〝どこでもドア〟はまるでコンニャクのようにグニャリと形を変えて、袋の中へ吸い込まれていく。文字通り〝どこでもドア〟は跡形もなく消えてしまった。
その様子を見て、のび太は何か思いついたようだ。自分のランドセルの中にも、ちょうど跡形もなく消してしまいたいものが入っている。
一方のドラえもんは、しゃがみ込んでひみつ道具の片付けをつづけていた。
包んだものの時間を過去や未来へ動かす〝タイムふろしき〟や、どんな病気でもたちどころに治してしまう〝お医者さんカバン〟、本物と見まがうリアルな映像を周りに映し出す〝立体映像機〟、思い出をお金に換える〝メモリーローン〟など、変わった道具の数々が部屋に散乱している。
「ドラえもん」
のび太はドラえもんの背中に声をかけた。
「ぼくがやっといてあげるよ。ドラえもんは散歩でもしてきたら?」
ドラえもんは手を止めて振り返る。目の前でのび太はニタニタと笑っている。
「いいの? のび太くんにしては気が利くなあ」
ドラえもんはその不自然な笑みには触れず、嬉しそうに立ち上がった。
「じゃあせっかくだから、こないだ知り合ったアメショーのモモちゃんとおしゃべりでもしてこようかな」
アメショーとはアメリカンショートヘアの略であり、ネコの種類だ。ドラえもんにはネコのガールフレンドが近所に何匹かいるのだ。
デレデレした顔でドラえもんは部屋を出ていく。
「それじゃ、あとよろしく~」
ドラえもんが廊下の向こうへ消えた瞬間、のび太はすばやく背中に隠し持っていたテストの答案を取り出した。そしてそのまま〝四次元ゴミ袋〟の口に近づける。のび太の思惑どおり、赤ペンで書かれた〝0〟の文字が四次元の彼方へ消えていく。その瞬間、
「のび太くん!」
鋭い声が部屋の入り口から聞こえた。先ほど出て行ったはずのドラえもんが、厳しい顔でのび太を睨みつけている。
「今、何を捨てた!」
ドラえもんはズンズンとこちらへ向かってくる。身長129・3 ㎝、体重129・3 ㎏の巨体が迫ってくるとなかなかの迫力だ。
「な、何も捨ててないよ! ドラえもんのガラクタを捨ててあげようと……」
のび太はあわてて〝四次元ゴミ袋〟を後ろ手に隠した。
「君が親切になるときは悪だくみをするときだけだ! どうせ0点のテストでも捨てたんだろ!」
ドラえもんは最初からのび太の企みに気づいていたらしい。怖い顔で〝四次元ゴミ袋〟を取り返してポケットにしまう。のび太は反論した。
「0点だけじゃないやい! 10点も15点もあるやい!」
本人にとっては大きな違いだったかもしれないが、ドラえもんはそういう問題じゃない、というようにのび太に顔を近づける。
「やっぱりそうじゃないか! 君ってやつはいつもいつも! もっとしっかりしたらどうなんだ!」
「!」
先ほどのび太が心の内で思っていたことを指摘され、のび太は思わず声を荒らげた。
「ぼくだって優等生に生まれたかったさ! だいたいぼくをしっかりさせるのが、ドラえもんの役目じゃないか! このダメロボット!」
強烈な悪口を放つものの、ドラえもんはまったく怯まない。
「人のせいにするな! このダメ小学生!」
「なんだと!」
「なんだ~!」
二人は顔をつきあわせてにらみ合い、大声で怒鳴り合う。そんな二人の大声が1階に届いて、「静かにしなさい!」とママが怒鳴り込んでくるまで、1分とかからなかった。
* * *
澄み切った青空の真ん中を、1機のジャンボ機がまっすぐに飛行機雲をひいていく。
そんな平和な空を、のび太は草原に寝そべって見上げていた。
ここは学校の裏山であり、のび太の秘密の場所でもある。つらいことやイヤなことがあると、ここに来てのんびりと過ごして心を休め、気分転換をするのだ。
ドラえもんとケンカして気持ちの晴れないのび太は、大きくため息をついた。
「あ~あ、ユートピアが本当にあったらなあ……」
のび太は出木杉の話を思い出す。苦しみや悲しみ、争いもまったくない楽園──今はそんな場所に行きたい気分だった。
しかし夢見がちな思考は長くは続かない。のび太はお得意の昼寝に入りかけ、目を閉じてウトウトし始める。
気持ち良さそうにスゥと寝息を立てていた安眠を妨げたのは、1匹の虫だった。
青い色の虫は顔の周りを羽音を立てて飛び回り、やがて鼻にとまる。いくら鈍感なのび太でも気づいたのか、目を閉じたままうっとうしそうに虫をはらった。しかし虫は何度でもしつこく鼻にとまってくる。
「もう、しつこい虫だなあ……」
さすがにのび太も目を開き、虫をつまんで目の前にかかげた。
「ん?」
そのとき、のび太は何かに気づいた。
青い虫の向こうの晴天の大空に、何か不思議なものが浮いている。それは金色の巨大な三日月のようなものだった。
月……?
しかし今は夜ではない。昼間に見える月もあるにはあるが、あれはいつも見ている月とはまるで違う。三日月形の何かは、太陽の光を受けてキラリと輝いた。
呆然と見つめたまま、のび太は出木杉の言葉を思い出す。
(『ユートピア』は三日月の形をした島でね……)
ひょっとして、あれは………!
のび太は青い虫を雑に放り投げ、勢いをつけて立ち上がった。
が、その瞬間、空に浮かんだ三日月形はまるで黒板消しで消されたかのように、サーッと静かに消えていく。
すべてを見ていたのび太は、「あ……」と声をもらす。
「あれ……あれ、あれれ……あれは……!」
のび太は走り出していた。一目散に坂を駆け下りながら、先ほどケンカをしたばかりの友人の名を叫ぶ。のび太の声が裏山に響き渡った。
「ド、ドド、ドドドドド……ドラえも~~~~ん!!」